2007年09月14日
かえるの王様(+付記)
「神様、わたしたちは代々この池で子孫を増やし、栄えてきました。
いまや森じゅうのどこをみても、これほどりっぱなかえるの国はございませんです。
ただひとつ、残念なことに、このかえるの国には王様がいないのでございます。
神様、わたしたちをあわれと思し召すならば、このかえるの国に、
どこにも負けないような立派な王様をおあたえくださいまし。」
これを聴いた神様、ある嵐の日に、大きなけやきの丸太ん棒を池に投げ込んでつかわした。
「やれうれしいな、王様だ。大きくて威厳があって、これなら西の小川のかえるたちもびっくりして腰を抜かすぞ!」
ところがこの王様、池の水面にぷかぷか浮かぶばかりで、つついても飛び乗ってもうんともすんとも言いやせぬ。
「ああ神様、これではあんまりです。これでは東の入り江のかえるたちにも笑われてしまいますです。どうかどうか、もっと気高くて美しくて強くてかっこいい王様をお与えくださいまし!」
つぎに神様が使わしたのは、大きくて真っ白なコウノトリの王様だった。
「やれうれしいな、ニンゲンの国にだってこれほどすてきな王様はおりゃせんぞ。」
ありったけのごちそうを持ち寄って、あたらしい王様の戴冠式が始まった。
もちろん森じゅうの(かえるの)国々からもお祝いの使者があつまって、
ちっぽけな池はまるでお祭りのようなにぎわいだ。
この様子を、けやきの丸太の上に腰を降ろしてじっとながめていた王様。
やおら立ち上がり悠然と周囲を見渡したかと思うと、
手を振り歓声をあげるかえるたちを、
一匹のこらず食べてしまいましたとさ。
おしまい。
× × ×
《付記》
幼い頃読んだイソップ童話の一篇。
小泉総理登場以降の日本、まさにこの「かえるの王国」だったような気がしてしまいます。
まるでスポーツカーみたいにわかりやすくかっこいい政治。迷いのない、迷うことそのものを悪として排除する政治。
つぎの王様は駄馬がいい。自分が一歩踏み出そうとするその先にちっぽけな虫が這っていないか、常にびくびくと気に病むひとであってほしい。
Posted by 独酔舎 at
22:56
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