手酌でGO！

今日はネタがないんで、ひさびさに「好きなミュージシャン」ネタね。

じつは私が一番好きなボーカリストは・・・

　詩に込められたメッセージとか、生きざまであるとか、ビジュアルであるとか、土着性とか、テクニックとか、「声域が何オクターブ」であるとか、

歌い手からそういった周辺情報をすべて剥ぎ取ってしまって、歌唱そのものだけをとりあげて優劣をつけようとするのは、たとえば「トラとライオンはどっちが強いの？」とたずねるのと同じくらい不可能で意味が無いことかもしれない。

でも、あえて「肉声でなにかを表現するひと」としてみたときに、わたしが一番好きで、かつ影響を受けたボーカリストはジャニスジョプリンだと思う。大学時代にFMラジオで聴いた「心のカケラ」一曲で、わたしの心は持っていかれてしまった。

ソウルやR&B畑にはもっと歌のうまい、声のよい人はいくらでもいると思う。でも、彼ら・彼女らの完璧にコントロールされた歌声には、山と積まれたデバイスによって歪みやフィードバックまでコントロールされたフュージョン（ふる！）のギターサウンドのようなオヤジ臭を感じてしまう。

ジャニスの歌の「歪み」は、フルテンにしたコンボアンプ（それも、あまりでかくないやつ）のそれだ。ひとつのメロディーを繰り返し歌いながらテンションを上げていったら、結果としてあそこまでいっちゃった、というような。
「ありゃりゃ、できちゃった。でも、できちゃったものはしょうがないから、このままいくぜぃ！」的な八方破れな爽快感。

ひょっとしたらコントロールのしかたを熟知していて、自分が発散する巨大なエネルギーをなんとかコントロールしてやろうと努力はしていたのかもしれない。でも、そこからはみ出す部分があまりに大きくて、そのまさに、はみ出したぶんが彼女の歌の「歪み」になっていく。

なんだか言葉を連ねれば連ねるほど、彼女から遠くなっていくような気がする。なんとかならんかな？

冒頭で挙げたさまざまな要素（メッセージとか、生きざまであるとか…）は、じつは歌をうたったり、他人がうたっているのを聴いたりするうえで、とても大切なことばかりだ。「実力で、本質で勝負だ！」なんて、わたしは絶対信用しない。

でもだからって、そういったバラのデータの集積＝歌っていうんじゃ、発電所の官制室でチカチカ光るメーターの羅列を見せられているみたいで、いかにもさびしい。

きっとわたしが（そしてみんなも？）いろいろなひとの歌をとっかえひっかえ聴きあさるのは、歌い手たちが身にまとっているテクニックやプロフィールの分厚い鎧（よろい）のあいだから、チロチロとはみ出してくる体臭の部分に生身の人間を感じたいからなんで、

彼女は誰よりも分厚い鎧の隙間から、誰よりも強烈な体臭を、火山の噴煙のように発散させている。だからわたしはジャニスジョプリンの歌が好きなんだなあ。

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