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2009年09月13日

人が死ぬってことは

うちらが住んでるマンションの近く
国道の交差点のはたに
O泉さんという老夫婦が住んでいた。
町内会長もやっていたのが縁で、
あかりさんなんか
とても可愛がってもらっていた。

去年、だんなさんのほうが亡くなって
ことしの初夏に奥さんのほうが亡くなった。

奥さんが亡くなる数日前、
「秋になったら庭の柿に実がなるから、
そうしたらあかりちゃんにたべさせてあげなくちゃ」
と言っていたと、だいぶあとになってから聞いた。

お葬式が終わって
半月ほど経って
O泉家の敷地にでっかい重機が入ってきた。
建物も家具も衣類もなにもかも
重機の爪でまぜこぜになって
ダンプカーの荷台に押し込まれてどこかにもっていかれてしまって

ああ、人が死ぬってのはこういうことなんだなあと
思った。

×   ×   ×

人が死ぬってことは
更地になったO泉家跡に
50代後半とおぼしき夫婦が
毎朝通ってくる。
マリーゴールドとかキバナコスモスとか
ちっちゃな草花を植えて、
毎朝水をやっている。

吹きっさらしの空き地で
真夏のかんかん照り

朝ちょっと水を撒くくらいじゃ
ぜんぜん追いつかない。
植えるもの植えるもの
あっという間に枯れていくんだけど
めげずに毎朝通ってきては
植えて 水を撒いている。

ああ、人が死ぬってのはこういうことなんだなあと
思った。

×   ×   ×

そうこうするうちに
黄褐色の更地の隅っこから
緑色の染みが広がって
このところのカラカラ天気に負けず
ずんずん領分を広げている。

枯れしなびていた
マリーゴールドもキバナコスモスも

緑の絨毯に覆われて一息ついて
ぼちぼち花をつけようかという風情。

O泉さんの庭の隅に植わってたマツバボタン
その根っこが
あれだけ重機がぶんぶん暴れまわったあとでも生きていて
息を吹き返したのだろうか。

乾いた初秋の空の下
ほこりっぽい国道脇に
ひとにぎりの緑地

ああ、人が死ぬってのはこういうことなんだなあと
思った。

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Posted by 独酔舎 at 20:40│Comments(0)
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