記念写真
・・・ごきげんちゃん。
右から、
ぽんぽこ・姑・お菊・舅。
姑が「すごくちいさいオバチャン」みたいに写っているが、さにあらず。実物に会ったひとはわかると思うが、ぽんぽこは日本人女性としてはかなりノッポなほうだ。
となりに立っている姑が相対的に小さく見えるのは仕方ないと思う。
・・・そのぽんぽこの胸のあたりの高さに舅のズボンのベルトがある。
そう。舅は大男なのだ。
わたしも絶対小柄なほうではないのだが、舅と立ち話をしていると首が痛くなる。
結婚を決めて、はじめてぽんぽこ家に挨拶に行ったとき、
正直言って「・・・しまった〜!」と思った。
近頃、お菊が強気だ。
× × ×
散歩の途中に道をそれて知らない場所に行っても2回に1回くらいしかエンスト(びびって座り込んでしまう)しなくなったし、
ラブラドールやマスチフみたいなでっかい犬や人間のコドモとすれちがってもびびらないどころか、調子がいいときには自分からちょっかい出したりもする。
× × ×
お菊の養家は古くからの自営業で、基本的に一階が店舗、二階が居住スペースになっていた。
つまり、お菊は一日の大半を家族の姿を見ずに、なおかつ一階の店舗に出入りする不特定多数のお客さんへの応対(震えて縮こまっているだけなのだが)に追われて過ごしていたと思われる。
× × ×
去年の暮に、お菊の養家は代々続いたお店をたたんだ。
同時に店舗兼用のごつい住居もとりこわして、今風のいかしたおうちを建てた。巨大な重機が数台ぶんぶんあばれまわり、震度3レベルの振動が朝から晩まで続く改築工事の喧騒に、弱虫お菊がよく耐えられたものだとちょっと見直したのだが・・・
新しい住居は南向きの広間が家族の集まるリビングになっていて、
でっかい窓の外にちょっとした庭があり、昼間のお菊はその窓のすぐ下につながれるようになった。
お菊は常に、大好きな家族の気配や話し声を感じながら暮らすようになった。
時折庭先を通り過ぎる野良猫やカラスにびびって悲鳴をあげたときも、その都度「どうした?」と声を掛けてもらえるようになった。
× × ×
姑がキッチンの中をせかせかとあるきまわり、
ぽんぽこと兄貴がダイニングテーブルに座り、
舅は窓際のソファーに埋まってうたたねをしており、
お菊はそのリビングの見える場所で昼寝をしたり、縁側に顎をのっけて「へっへっ!」と愛想をふりまいたり、運がいいとちょっとしたおやつをもらって喜んだりしている。
リビングに背中をむけてだらしなく寝そべりながら、家の中で軽い笑いが起きたりするたびに耳だけはくりっ!とこちらに向けているお菊を見ていると、
ああ、こいつはいまやっと家族に「参加」してるんだなあ。
家業をたたんだことについては、そりゃいろいろあるだろうけど、
少なくともこいつにとっては、・・・
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